距離/アンテ
風に揺れている
白やピンクの花が
なんて
懐かしい
振り仰いだ空に
太陽がマグネットみたいに貼り付いている
夜になったら星がきれいだろう
って思いかけて
太陽も星だと訂正
振り返ると
彼女はまだぽかんと口を開けたままで
その背後にあったはずの
ドアがどこにも見あたらない
世界がずいぶん広いって
知ったのはいつだっただろう
きっと
星に手が届かないことよりも
ずっとあとに知ったにちがいない
だからあの時
太陽や星を捕まえられないのは
ぼくがまだ子供で
柄の長い虫取り網を持つだけの力がないせいだと
自分をなぐさめたんだ
心配そうな彼女に
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