フラグメンツ(リプライズ) #71〜80/大覚アキラ
 

 きみの手の温もりを感じながら
 ぼくは
 断頭台に上る階段を思い浮かべていた

 空がいつもより青く見えた



#76

 寒い町から来た彼女と駅前で待ち合わせ
 約束の時間ぴったりに落ち合って
 人波を泳ぐように逆行して
 坂の途中にある薄暗いおでん屋に潜り込む

 何が起きてもおかしくないし
 何も起きなくてもおかしくない
 少し酔いが回った勢いで
 肩に腕なんか回したり
 ちょっと赤くなった頬に触ったりしても
 たぶん今なら許される
 そんな曖昧なふたり

 器の中にはすこし冷めてしまった大根が
 曖昧なまま置き去りにされて
 グラスの
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