難破した船の来歴/岡部淳太郎
 
それから人びとは浜辺にゆっくりと集まって
きた。ぬめぬめした、軟体動物のような朝、
塩辛い希望を胸の前に抱えて持ち、人びとは
次から次へと、前の扉から次の出口へと、通
りぬけるように浜辺に集まってきた。その船
は古臭く、腐り果てていて、何世紀もの時代
を潜りぬけてきたかのように見えた。波は静
かに船の足下を洗い、船の下で、砂は無言で
圧死していた。人びとは物見高い眼差しで船
を眺め、その船の経て来た波の道を、口々に
噂し合った。

      ざら、ざら、

            この世のものでは
ないような音が、船の中から聞こえてきた。
それは若い者の耳には聞こ
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  グループ"散文詩"
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