石のための散文詩/岡部淳太郎
て思い出は空
のむこうのとてもとおいところからゆっくり
とやってきたあなたが笑うのもあなたが泣く
のもあなたが生きるのもあなたが死んでしま
うのもそれによって私が泣いてしまうのもす
べてやがてはただの思い出とおい思い出すた
めの思い出忘れないための思い出にすぎない
石はやってきてちらばって地のそこかしこに
思い出をつめこんだまま人しれずかえりみら
れることなくあたりまえに存在している私は
石てのひらの中につつみこむことができる小
さな石あなたは私をつかんで川のながれるほ
うへとほうりなげるあなたは私につまずいて
膝をすりむく私の中ではとおい思い出がねむ
らずにねむれずにいまもこの夜にずっとある
(二〇〇五年四月)
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