ウサギと鍵と橋に関する断章/佐々宝砂
ウサギは窓辺で静かに眠っている。ゆっくり上下するので息をしているのがどうにかわかる。死にかけたウサギをそのままに私は玄関の鍵を閉めてでかける。すこし歩いて橋を渡ればそこはウサギはおろか蟻一匹生きてはいない煉獄だ。ウサギよ、私を追うな。静かに息をしていてくれ。
なくした鍵を必死になって探した。部屋の中にはなかったので外に出て橋を渡って探したが見つからず家に戻ってたたきをみたら、ふいと足元に落ちていた。よかった、と思って部屋に戻り、ウサギの鍵穴にさしこむ。ピープ音がしてウサギはひょこひょこと動き出した。
ウサギを見ませんでしたか。橋姫に問うと鍵を渡された。どこの鍵。橋の鍵ではないと言われた
[次のページ]
前 グループ"閃篇"
編 削 Point(2)