閃篇5 そのいち/佐々宝砂
 
1 また明日

また明日、と言って彼女は顔を伏せた。また明日、明日はいつくるのかと聞いたらまた明日なんだから明日来るに決まってるだろうと笑われたがここは明日が明日来るかわからない土地なのだ。みんなそれをわかって笑ってる。明日とは何か。誰もわからない。誰も知らない。明日はこの世界の自然係数も変わってしまって明日は明日の世界が来るとしか言いようがないけど、でも、わかってることや変わらないこともある。私はコーヒーが大好きだ。うちの隣のおにいさんは向こう隣の本屋のおねえさんが大好きだ。たぶん因果律がどんなに変わってもそういうことは変わらない。つまり世界が変化してもこのコーヒーは美味しいのだ。

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