瞬篇3/佐々宝砂
1 草
抜いても抜いても草がある。祖母が亡くなるまでは祖母が抜いていた。いまは私とこどもが抜く。春まだ浅いので、たくさん草があるといってもみな背が低い。ヒメオドリコソウ、クローバー、ムラサキツメクサ、カタバミ、ハハコグサ、こどもに草の種類を教えながら、やたらにひっつかんで根こそぎ抜く。もう少し大きければ食べられないこともないが、それほどの大きさではない。それにしても草取りをすると腰が痛む。立ち上がって伸びをして、空を仰ぐ。なんだあれは。目を見張る。巨大な手がおりてくる。私ではなくこどもをひっつかんで、まるで根こそぎに、そして天から声が降り注ぐ、ああ、全く、抜いても抜いても草がある。
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