くま/はるな
 
蜜の朝
蜜の朝、それは春で、くまたちは起きて蜜を舐めます。
弱いのも、おおきいのも、老いたのも、みんなです。
くまたちは優しくて、眠りすぎたくまにも、ちゃんと声をかけます。
けれども、青の家のくまはとうとう起きてきませんでした。
「なぜ起きないのかな。」
白のくまも、むらさきのくまも、臙脂のくまも、みんな、おもいました。
そして、ちゃんと忘れました。
春は深く、緑が息を苦しくします。
くまたちは育ち、狩り、あるいは狩られ、死んだり、生きのびたりしました。

春の曲がり角を、うまくまがれなかった、
青いくまは、今はそう考えています。
蜜の朝、くまたちのむしゃむしゃは優しかったけれども、
優しいことはなんの役にも立ちませんでした。
くまはもう、蜜も、青も、春も、毛も、とってもいやだし、疲れていました。
あるだけのすべてが悲しい春に、どうして角を曲がれたでしょう?
世界が動く気配がします。星がちかちか鳴ってるのも聞こえます。
けれどもそれはみんな、みんな、肌の向こうの遠いはなしです。

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