エインスベルの反逆(十)/朧月夜
 
エインスベルは、まずはオーバ・ニーチェに取り入ることから事を始めた。
戦士エイソスを、偽名をもってその組織に潜り込ませるのである。
戦士エイソスは、貴族である身分を偽って、オーバ・ニーチェに潜入した。
クールラントの諜報機関であるオーバ・ニーチェは、

ヒスフェル聖国のアーゼン・クラウトほど徹底してはいなかった。
何よりも、オーバ・ニーチェは、祭祀クーラスとも齟齬があったのである。
オーバ・ニーチェは、何よりもクールラントの安寧を是としている。
それに対して、クーラスはオーバ・ニーチェを自らの組織だと考えていた。

これが、権力を得た者の傲慢さであろう。何もかもが自分の思い通りになると。
しかし、オーバ・ニーチェは何よりもクールラントのことを考えていた。
場合によっては、祭祀クーラスを排斥することも選択肢の一つなのである。

そのような、軋轢のある組織において、戦士エイソスが侵入することは容易だった。
イリアス・ナディが誘拐されて、二か月。戦士エイソスは、
徐々にその所在についても、明確な情報を得ようとしていた。
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