エインスベルの反逆(十七)/朧月夜
しかし、ジギリス・ア・アルヌーは慎重だった。
偽名を使ってとは言え、国王の宮殿に一人訪れるということは、
何らかの魔術を使ったと思われる。
クールラントの国務大臣であるカイゼル・アラーヌイに密かに命じた。
「エインスベル。いや、アルスレイン・ユークレイナという女について、
監視役をつけよ。この女が何を考えているのか、分からない。
場合によっては、余の命を奪われるかもしれない」
その言葉に対して、カイゼルは驚いた。
「陛下は、なぜそのような人物にお会いになったのですか?」
「死を恐れていないからだ。国を回すには、あらゆることを気にかけていなければいけない。
敵も味方も、この国の国民であることに変わりはないのだ」
「陛下のお考えは分かりました。早速、監視役を手配するようにしましょう。
ちなみに、その者は刺客となることもあり得ますか?」
「大いにあり得る。信用することと、疑うこととは紙一重なのだ」
前 次 グループ"クールラントの詩"
編 削 Point(1)