幽冥界のヨラン(三)/朧月夜
 
(エランドルとは誰のことか?)ヨランは心のなかで呟いた。
そこに、天にも轟くような声が響いた。
「そこにいるのは誰か? ここは幽冥界であるぞ。
 誰もここに入り込んではならないのだ」

それはアゴンザカルの声であった。
盗賊ヨランは、すぐに弁明をする必要に迫られた。
「へい、わたしはヨラン・フィデリコでございます。
 しがない盗賊稼業をしています」

「盗賊稼業か。卑しき者だな。しかし、ここには盗む物などないぞ」
ガイゲスが厳かな調子で言った。
「へい、それはすでに承知しているんでございます。必要なのは情報です」

「情報だと? お前は愚か者なのか?」ザケルハイドは尋ねた。
「おっしゃる通りでございます。わたしは盗賊、そして愚か者です」
「では、なぜ幽冥界などを訪れたのだ?」
   グループ"クールラントの詩"
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