幽冥界のヨラン(四)/朧月夜
 
「幽冥界には知られてはいけないことがある」アゴンザカルは呟いた。
それは盗賊ヨランに向けたものでも、そうではないようにも思えた。
「世界を支配するのは、幽冥界こそが適しているのだ。
 天国でも地獄でも、現世でもない」と、ガイゲス。

「デーモンとはいかなる存在でもない」今度はザケルハイドが口を開いた。
「世界はデーモンの力によって秩序を取り戻さなければいけない」
「世界は混沌としていますか?」盗賊ヨランは訊いた。
「そうだ。世界は闇に包まれているのだ」

それ以上のことを、盗賊ヨランは聞かなかった。
どうしても、現世であるアースレジェに帰らなければいけないと思った。
いつかは、デーモンたちと人間との争いが起こるのだろうか?

盗賊ヨランは自分以外の者たちの身をも案じていた。
「人間たちは滅ぼされるような者たちではないと、存じます」
その言葉を後に、盗賊ヨランは幽冥界カジガンデを後にした。
   グループ"クールラントの詩"
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