来訪者（一）/朧月夜
そのころ、エインスベルを訪ねてきた者があった。
それは、誰あろう、ハザック・アザンであった。
「一体、わたしに何の用か。
祭祀クーラスとは、すでに縁が切れているのであろう？」
「さすがに鋭いですね。
今はわたしは、完全にアースランテの人間です。
そこで頼みがあるのです。それは……
アースランテに亡命してはくださいませんか？」
「わたしに、アイソニアの騎士と同じ道を歩めというのか？」
「同じではありません。アースランテの国王は、
あなたに正魔導士の位を与えようとしているのです」
「話はそれだけか？ わたしはクールラントに恩がある」
「そのクールラントが、あなたの命を狙っていてもですか？
あなたは今、裏切り者の立場にあるのですよ」
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