紫陽花と秋桜の話/板谷みきょう
 
紫陽花の花が秋桜に恋をしました。
いつかその純粋な想いを伝えて、
一緒になる事を夢見ておりました。
そうして紫陽花は、
その想いを、日に日に募らせて行きました。
しかし、ある時、風がささやきました。
『秋桜が咲くのは、君が散ったずっと後だよ。』
すっかりのぼせあがっていた紫陽花は、
季節の違いを忘れていた事に初めて気付きました。
それからの紫陽花は、
哀しみにどんどんと青く染まって行きました。

空は同情を寄せ涙を流しました。
その涙は雨となって大地に降って行きました。
空はそんな形でしか、優しさを伝えられませんでした。
が、雨を受けた大地は、
そんな空の心根を無駄
[次のページ]
   グループ"童話モドキ"
   Point(0)