鬼になった子供(鬼吉と春一番)/板谷みきょう
 
とよ。なんでも屏風山の奥深く、獣をむさぼり、草をくらって鬼になったっちゅうての。それは、恐ろしかったべな。皆で仲間はずれにした事にうしろめたさがあるもんな。でも一人だけ安心してたのが澄乃よ。吉の姿が消えてから、心配と後悔で眠れん夜が幾晩続いたか。村のもんが村に来んでほしいと願った時でも、一人もどって来て欲しいと思ってたんだと。いろりを囲んで、村の者が話し合ってな、お寺さんが仏様に願いを掛けたんぢゃ。鬼となった吉が村に入れねぇようにとな。澄乃ってば、そんな事とは露知らず、吉の来るのを楽しみに待ってたんだと。
私の吉よ、いつ帰る
人の姿で帰るのか
鬼の姿で帰るのか
どちらにしても
吉よ吉

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