鬼になった子供(鬼吉と春一番)/板谷みきょう
 

その唄声が辻々を巡ってる間に、いろんな鳥達が真似をして歌う様になったんだと。キチ、キチ、キチってな。
何年たったか解んねぇ。一年なもんだか十年なもんだか。それが屏風山まで届いたんだと。そん時だ。真っ赤な火みてえに真っ赤な、おっかねえ顔した鬼が、ものすごい形相で村さ向かったのは。はやて風みてぇにな。そん時、鬼は思ってたんだと。もう鬼にはなれねえってな。悔やみ切れずに屏風山から風みてぇに村さ向かっての。悔やんでも、悔やんでも、人間には戻れねえっての。それが、吉だ、吉だったんだとよ。ごおっごおってな、音をたててすげえ速さでよ。
したけど、村に着いた時には鬼の姿は消えておって、澄乃の家の垣根を揺ら
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