貝塚 より/沼谷香澄
 
墓ではなくて、地位高い人でもなくて、
ノーマルな土葬であれば、骨さえも残らぬものを、
今もなおこの地に産す、あり余る貝のまなかに、
干潟から離れた丘の、日の当たる乾いた土地に、
日の下にゆるく抱き合う、この二人誰の意志にて、
愛し合う形ばかりが、このように葬られたか、
このよに永らえたのか、関係は今も判らずと、
銘板は言葉少なに、人骨の由来を示す、
美しき人の心を、伝えゆく手段はあるか、
たとえば 恋愛悲劇、二時間分の言葉を使い、
時々に再現されて、時々の人の心を、
それぞれにうごかしてゆく、書になれば形に残り、
大切に蔵に置かれる、ふりかえり骨みお
[次のページ]
  グループ"個人誌「Tongue」収録作"
   Point(1)