エスカリエの沈黙・試論/ハァモニィベル
エスカリエの沈黙・試論
、林檎を齧りながら
本を読んで いました。
そして、静かに、
手を伸ばせば取れるほど
真近かに
林檎は
赤く光って いました。
今にも
太陽系の平衡が破れでもするように、
突然、天上に向かって
落下する気配もなく。
林檎は 齧られながら、
本もまた 読まれながら
そうしていました。
「林檎 と云う果物を忘るる事は
とうてい文芸家には できんのであります」―と、(漱石)は
言っていました。
林檎を齧られながら、本は読まれつづけていました。
「だって、だって、母様、母様
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