ミステリアス・パロディは月夜を染めて/りゅうのあくび
ら
届くことを待つ
夢の欠片ではない
雲もひとつない空が運ぶ
月夜は優しく海を包んでいる
いつもより静かな海は春風のなか
海岸線に波を打ち寄せることが
まったくできずに
ただ薄墨色の彩りだけが
月夜をようやく染める
ミステリアス・パロディが始める
そう詩人たちにとっては
彼の詩はただの我儘みたいに
渡り鳥たちが海に映した
影の群れを描いていたとばかりだと
想っていたけれども
本当のところ
それは思い過ごしだったのだ
仕事から帰る途中で
僕自身の影に
彼が描く詩にとても似た
影を見つけて
それが渡り鳥の影でもないことに
先ほど気付いたばかりだった
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