弟と驟雨と鯉/りゅうのあくび
耳の周りや頬の近くやらを
冷たく刻み込むような
秋の驟雨が染み込む
家路を逝く靴音には
永い冬の訪れを
哀しむようにして
静かにアスファルトを
夜空よりも黒い色に変えてゆく
*
地下を潜る
水道管でできた迷路の
奥深くでは
とても悲しい汚水の淀みに
遠く孤独な恋の焦燥や
おのれの信仰から
消え去っていく世の憐れみや
数多くの生命の体液も
そして都会の喧騒でさえも
暗闇の刹那にあって
溶かされていく
*
豪雨の
巨大都市(メトロポリス)のなかに佇む
たくさんの窓には
塵の混じった涙が流れ
二十分もしないうちに
すぐに大河みたいに
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