弟と驟雨と鯉/りゅうのあくび
 
いになるのだった
水処理場で仕事をする
地下に棲む男たちによって
都会に淀む濁った大量の涙は
再び清らかな
水へと還ってゆく

 *

厚く重たい雲のなかで
見えない月は浮かび
豪雨のもとで
河川の喫水線を超えた
大量の汚水に何十匹と云う
とても大きな鯉(カープ)の魚群が
水処理場へと到着する
水流に紛れて
打ち寄せられると云う

 *

弟は来る日も
現場の職務に当たる一人の人間として
スクリーンと称される
ろ過装置が破砕しないように
たくさんの鯉(カープ)をコンテナと呼ばれる
焼却用の運搬装置の中に
涙を浮かべては
次々と鯉(カープ)を投
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