短編フィクション/竜門勇気
今朝、壁に向かって日課である料理をしていると、モグラの夫婦が冷たいレモネードを携えてやってきた。
玄関のツタと春雨とモビルスーツの絡んだインターホンの前で二人と話す。
どうしてあなたって言う人は何度言ってもそれをやめてくれないのか。
モグラは言った。
ぼくは今朝の食事を作っているだけですし、随分と気を使って観葉植物を幾つもすりつぶしていますが、苔の話ですか?苔なんですか?電話しますか?
いいえ、そうじゃありません。あなたが壁に向かって料理をするとわたしの嫁はまるで米朝の子誉めを聞いたかのように苦しみ、水を飲んでは服をたたみます。それらは額の中にあります。
水掛け論に
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