笛吹き少年の行くえ(5)/Giton
 
も少し降って来ます。それでも、「なやみ」に沈んでいる作者にとっては、空の広さと明るさが救いになっているようです。

地上では、クルミの木、また、杉の木が、空に向かって梢を伸ばしています。
葉の落ちたクルミは、天の「若き母」に向かって枝を広げているように見えます。その姿を、作者は「あやしい」と言うのです:


「そらの若き母に
 梢さゝぐるくるみの木
 くるみのえだの
 かぼそい蔓。
 
     ※
 
 そらしろびかり
 くるみとは
 げにもあやしき
 気圏の底のいきものなるかな。」


これに対して、杉のほうは、クルミ以上に怪しく、黒々と乱れ、尖った矛先を
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   グループ"宮沢賢治詩の分析と鑑賞"
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