笛吹き少年の行くえ(5)/Giton
 
文語か口語かどちらかに一貫せよなどと要求することが、いかに愚劣なことか、また、いかに詩人の創作活動を妨害するものか、よく分かると思います。)


「雪の中にて
 蝉なくらしを。
 
     ※
 
 そのとき
 雪の蝉
 又鳴けり。」


まず、↑上の部分ですが、「雪の蝉」というのは、おそらく雪を踏んで歩いていると足の下から聞こえる「ギュッ、ギュッ」という音が、冬には居るはずのない蝉の鳴き声に聴こえた──ということではないでしょうか。

「若きそらの母」「そらの若き母」「母のみそら」と、作者は頭上の空に注目していますが、それは「しろびかり」する冬の曇り空です。雪も少
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   グループ"宮沢賢治詩の分析と鑑賞"
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