現場のへその緒(3)/Giton
 
3 地図上の思考実験

岡澤氏の本との出会いは、私が長いあいだ切望していた僥倖でした。子どものころ、アンリ・ファーブルの『昆虫記』の最初に、あるとき、ファーブルは高名な学者の本を読んで刺激され、自分でも昆虫の観察──当時はまだ学問とは思われていませんでした──を始めたといういきさつが書いてあるのを読んで、自分もいつかは、こんな本とのめぐり逢いをしてみたいと、思ったものでした。

しかし、岡澤氏は、長詩「小岩井農場」のすべての部分に説明をつけているわけではありませんでした。説明なく飛ばしている部分はたくさんあり、そうした部分は、現地に行けば当然にわかることで、現地をしばしば訪れている人には自
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   グループ"宮沢賢治詩の分析と鑑賞"
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