a/ayame
マニキュアが零れた。赤いマニキュアは真っ赤な血のように広く伸びて行く。塗り掛けの爪から外れたマニキュアは指を伝い一滴垂れた。千歳は焦ることなくティッシュを除光液に付けて真っ赤な血を拭く。
「くさい」
「ごめんこぼした」
「またあ?」
「あ、そっち拭いて」
「へーい」
千尋は手際良く拭き終わると千歳の手をとる。
「わたしが塗ってあげましょうか?」
まっすぐに向けられた目は肯定を意味しているのだろう。倒れた瓶を戻して優しく爪に塗り始める。
前 グループ"Marchen"
編 削 Point(1)