十二月の本/石瀬琳々
 
風を切る翼は遠い 
思う心も願いもきっと彼方にあるようで


十二月の本にいつしか囚われて
ガラスのなかの一途な世界
閉じ込められて 飾られてなお
あえかな羽毛の祝福で覆われる
あなたを埋めてゆく わたしを埋めてゆく冷たい愛撫
一瞬でくずおれる何か
触れられそうで触れられない永遠に似て


十二月の本がゆっくり閉じる
何枚もの扉のそのうちがわに
ただひとつのものがたりを隠しながら
鼓動は同調するだろう ふたたびの
鐘の音のように 
口ずさむ韻律のようにひそやかに



   グループ"十二か月の詩集"
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