ウワバミの中の象/そらの珊瑚
 
ゆるゆると解凍されて泳ぎ出す初夏のひざしに冷凍金魚

てのひらに埋め込まれた鉛筆の種 いつまで待っても芽が出ませんが

捨てました古い日記も捨てましたあとかたもなくみじん切りして

虎猫と眺める空にやる気ないメザシのようなこいのぼり

マジシャンの流れるような手の動き重力さえも手玉にされる

かもめ橋午前零時に猫たちの集会ありますご参加ください

人肌に溶けていくのはわだかまりバターソースにキャラメル添えて

満たされて膨らみきったかなしみを抱えて笑う古い掃除機

アボカドにくるぶしのような種ひとつ ふたつそろえば人間になる

階段をひとつとばしで駆け上がるように恋したいつかの私

散る桜ひとつひとつにメッセージNR NR No Return

   グループ"夢見る頃を過ぎても(短歌)"
   Point(9)