夕焼け心中/そらの珊瑚
 
トリセツをただの一度も読まずとも正しい呼吸の仕方はわかる

もともとはペアであった靴下も気づくと穴が片方だけに

色褪せたペエジをめくる緑風が塗り替え時期と付箋をつけた

強風でバタンッと閉じた扉には怒りにも似た狂気をはらみ

永遠の波間に浮かぶサンダルを拾い上げればまた夏が来る

やわやかな空気を含む腐葉土は全て育む寛容を持つ

先に逝き待ってる人はおしなべてゆっくりおいでと微笑んでいる

柔らかい心のどこかに手をかざし瞳に真水 【自動水栓】

朝に逢い昼に離れられなくなり日暮れに終わる夕焼け心中
   グループ"夢見る頃を過ぎても(短歌)"
   Point(12)