金魚(散文詩)/そらの珊瑚
 
りたい、と私は願う。
 水槽の中では金魚の尾ひれによって生まれた波紋が、真緑の水草を弄んでいた。
 外へ出たら、海のような空に、くっきりと虹が渡っていた。虹の上を渡れないと知って失望したのは、果たしていつごろだったろうか。先ほどの少女は、どうだろう。もし信じているのなら、共に、ここではない何処かへ渡ってみたいものだ。
 虹を渡ったその先に天国というものがあるとしたら、信じてはいないが、想像するのもきっと楽しいことだろう。
とうの昔に得た失望感は、永い熟成を経て、確かな発酵物となっているはずだ。私は宗教を持たないが、発酵物を心に置くじじいだ。



  グループ"散文詩"
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