幻影のバラード/るるりら
 
少女は ある年の四月からというもの バラードの中のヤマネだった
両親と同じ名ではなく ヤマネだった
冬眠のように まどろんで
春眠のような いつくしみで育てられ
ひかりが はねようが
とりが むれをなそうが
いつしか少女は ヤマネとなっていた

冬眠から目覚めたヤマネは 黒い瞳を くりくりさせながら
極彩色文化のビルディングの中に出かけ
黒目がちにアニメ声で携帯電話の売り子をするが
気が付くと ビルディングは すっかり緑に覆われ
インパラがビルとビルの軒から軒に跳ねて 
屋上まで 駆け上がっていたりしている
ひかりがビルの中で どんなに はねよ
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