その日は桜の花が咲いていた/岡部淳太郎
 
らしながら急いでいた。だから、いつものバス通りに桜の花が咲いていたかどうかなんて、気にかける余裕がなかった。だけど、あなたの死顔を見て、あなたが既に向こう側に渡ってしまってもう二度と帰ってこないのを確認した翌日、その時の呆然とした気分は、いまでも昨日のことのように思い出すことが出来る。あなたがいなくなってしまったという事実に対してどうしたらいいかわからずに、僕はひとりぼんやりと外に出て歩いていた。いつものバス通り。あなたも含めた僕たちが何度も何度も数え切れないほど通り、行っては戻ってきたバス通りを、僕はぼんやりと歩いていた。まるで心を失ってしまったような気分だった。僕が確かに持っていたはずの心がな
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