その日は桜の花が咲いていた/岡部淳太郎
渡った向こう側のことなど何ひとつ知らない僕たちからすれば、死後も人の記憶が残りうるかどうか、もし残るのだとしても、あなたがそのことを憶えているのかどうかなんて、知る由もない。あなたがいなくなった後、僕たちが変らず元気にしていると、あなたに伝えることが出来ればいいのだけれど、それも出来ない。僕たちはここに残って、ただ静かにたたずむことしか出来ない。
僕は憶えている。その日のことを、あなたが死にとらえられた日のことを、僕はいまでもはっきりと憶えている。僕があなたの知らせを聞いたのはもう辺りが暗くなり始めていた時間で、その時の僕はそれを聞いて驚いて、早くあなたに会いに行かなければと思って、いらいらし
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