睡眠/はるな
 
かも覚えていなかったが、眠りたいということだけは覚えていた。そして彼女が来た。たやすい仕種でわたしに触れにきた。この世界に難しいことなどないのだというふうに。わたしは触れられた。それだけで疲れた。触れられることは疲れることだった。彼女が何かを話した。足元にちらばっているはずの声を判別するには空気は濁りすぎていた。彼女はわたしを横たえ、毛布をかけた。それは毛布だった。暖かいと思った。寒かったのだと思った。今まで、途方もなく、寒かったのだと、そのとき、思った。わたしは彼女が憎かった。寒さも暖かさも、言葉も、必要のないところまで、わたしは行くことができたのに、彼女がたやすく、掬いあげてしまった。わたしは
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