睡眠/はるな
。雨粒さえ重たかった。物事の重みと体の密度が反比例していく日々だ。それでもわたしの体は眠りを思い出さなかった。永遠のような遠浅を泳がねばならない。足をつくことも思いつかなかった。泳ぎ続けた。溺れ続けていたとも言えるかもしれない。空気はゼリーのように密度を増し、音はぶよぶよとわめいてわたしの五センチ先にどたどたと落ちていった。足元を見て、わたしは会話をするしかなかった。声がうまく届かず、ばらばらに散らばるその塊を判別していかなければならなかった。当然のように会話は成り立たず、わたしも、周囲も、しだいにそれを放棄していった。そしてゼリーは重たくなり続けた。そのときにはわたしはほとんど完全に隔てられた世
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