素顔/士狼(銀)
 
れるのを躊躇う
絹のような滑らかさと
痛いほどの冷たさに怯えて
胸に抱かれた幼子の顔と
母の微笑に
囁くように告げるのは
懺悔

喉の痛みがなくなると
ランプの灯が眼に沁みて
わたしはひっそりと、

泣くのであった

眼鏡をかけて日常に戻り
玄関の錠を
しん、と落とす
口元には
小さな笑みを浮かべ
処方された無口を
粉薬で内側に溶かす
隠した涙は頬に刻まれたまま

強がりを被って、眠りに落ちる

   グループ"complex≒indication"
   Point(9)