樹々へのコラージュ/草野春心
スーンが柔毛を撫でて去るのを見送って
いれば、それでよかった。
わたしは
ひとひらの迷いを
抱え、
閉ざしたまま
散ってゆく、
一台の
車。
(偶然)
街に
背中があり
偶然の歌たちはそこで
這い這いをして遊んでいる
街に腕があり
偶然の夢を抱えて
ドッジボールに興じている
スコアさえ忘れて
街に
心があり
偶然の愛に
少しだけ、怯えている
(旅の宿)
風が
そよぐのをやめたとき
僕の一枚の姿は
きみの瞳にするりとおさまる
日々のつかれ
嘆きにはせめて
湯のみ一杯の夢を
花が
わらうのをやめたとき
そばに居てくれ
居させてくれ
きみの瞳だけが
僕の旅の宿
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