火星の風/
佐藤伊織
ロケットが突き刺さったあの丘は
今日も明日も照らされたまま
火星人の去った夜に
一人泣いているモニタの少女
差し伸べられた手は
もう何万年も前のこと
そんな時からディスプレイで一人
ロケットが突き刺さったあの丘は
今日も明日も風もなく
生きているものはなにもなく
死んでいるものもなにもなく
ただディスプレイに映るあの娘だけが
そうして泣いておりました
前
次
グループ"宇宙詩"
編
削
Point
(8)