終着駅/草野春心
 


  終着駅まで眠っていた
  雪がこそこそ降っている
  
  
  
  汚い水のなかに
  ゲンゴロウは浮かんでいる
  だが、その正確な形状を
  ちっともしらない私だ



  駅員が切符にカチンと鋏をいれる
  まるで僧侶のような男だ
  終着駅
  一台のタクシーさえ停まっていない
  電灯が白々と痙攣している



   グループ"短詩集"
   Point(14)