悲しい鍋/草野春心
 


  悲しい鍋は 空間のなかで軽く
  あまりに軽く 見つめているのも辛い
  ザラメじみた虚しさがいっぱい光に揺れて

  私は考え・手離し・ひろい集め・擲ち、
  気狂いになった……予定調和的に
  糸屑のような今を指で払って

  キッチンで飲むともなく飲む缶酒の底に
  そう、確かに あなたがたの言うとおりに
  他者は居た。でも、なんだかブリキみたいだな



   グループ"短詩集"
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