ノスタルジア/草野春心
吸い込んだり吐き出したり無駄の多いアンチエコな肺と、
いまここで火を火であることに無我夢中なライターの火、
何を為しているのか自分でもわかってはいない不思議感、
ひとつのこらず僕の、ノスタルジア。
むすんでひらいてを
ハミングする女が、
うすぐらい廊下を
ひたひた渡り来て、
僕の母親はもう
とうに亡いと言い、
嘘と本当をひっくり返して遊んでいる。
換気口に向かって
もくもくと吹き出す積乱雲、
出口のない真っ白な光のなかで
僕が不器用に君を思っているのを
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