ノスタルジア/草野春心
君が、
どこかから見ていたのを知っている。
*
君の目に
海があふれている
君の耳を
潮風が抜けてゆく
君の口は
あの夏の貝殻
黒板にチョークで文字を描く
君の背中の内側が揺れる
僕の心の愛がきしむ
世界が世界である意味はもうない
からっぽな歌でつないだ
十代の約束
からっぽな愛でむすんだ
十代の約束
からっぽな空にきざんだ
十代の約束
からっぽな僕と君の
十代の約束
(おぼえてる?)
*
無限に続く太陽への螺旋階段を息切らして登り、
無限に続く八月への憧憬を息切らして振り払い、
僕たちがどっぷりと穢れを知ったとき、
だれかの性器から顔をひょこりと出す
どこか別の世界のための赤んぼう、
それが、僕たちのノスタルジア。
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