都市風景(41〜60)/草野春心
なんだかよくわからないものは
今日、消えてしまっているのかもしれないが
そんなこと意に介す者はいないだろう
49.
草葉の歯がたてる
痛ましい靴擦れの音
根の根に深く根ざす
手付かずのコタエ
50.
時折、
朧な霧の見せる
虚像のように、歌は
月影に明滅し
伸ばされる数多の手は
騒々しく
光の斑に冒される……淡く、
心細く
51.
透明人間は透明な煙草を吸う
透明なニコチンが透明な肺に落ち
透明な心は透明な憂鬱に耽る
52.
故郷の池の
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