都市風景(81〜100)/草野春心
81.
太陽の真実を
月が省察している
82.
会議室のホワイトボードに掲げた
サハラ砂漠のレントゲン写真
言葉は保冷剤ほどの値打ちもない
むしろ沈黙こそが
光となり闇を照らす
83.
古い本の頁を行く永遠の女の子に
かくれて口づけたあの日
重ねた手と手のすき間のような
うすら寒い時間のせいで
僕は僕自身とさえ隔てられ
我々が歳をとってゆくときの
静かな金属音がきこえた……
84.
ラジオからあふれる高校野球の騒音にまぎれ
遠い戦場の遠い作戦が伝
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