【批評祭参加作品】まど・みちおの戦争協力詩/石川敬大
戦争協力詩を書いた事実の指摘にじしんが驚いたし、「なぜ?」と自問もした。全詩集の「あとがきにかえて」はすべて謝罪の言葉で費やした。「読者であった子供たちにお詫びを言おうにも、もう五十年も経っています」「私のインチキぶりを世にさらすことで恕して頂こうと考えました」と、自分を責めた。
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われわれは、いやわたしは、この姿勢を見習わなければならない。万が一意に沿わぬものを書いてしまったとはいえ、あるいは一時の気の「昂り」から書いてしまったものを、こうまでじぶんの全詩集というすべての過去の作品に対して責任を負えるものだろうか。
書いて発表することの重さ、ひとに伝えることの責任感、そして矜持、まどにははるかに及ばないじぶんが情けなく思う。戦後65年の節目にあたって、われわれは、いやわたしは、もう一度、じぶんが書くものに対して、作品を発表するということに対して、読者に対してきちんと正対し、襟をただしてかからなければならないと思う。
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