ぶらり一人歩き/……とある蛙
真っ昼間
駿河台から坂下りて
神田で飲んだその後で
鯛焼き片手にぶら歩き
仕事も無い
家族もない
まして、恋人もなければ
金も無い
おまけに今日も
予定が無い
だから酒の力を借りて
よく知る街の真ん中で
人や景色を探検する。
街はいつも顔が無い。
車道に車は走り抜け
街に何の興味も示さず
興味の無いメカな疾走
歩道を歩く人人人
表情の無い人々だけで
足早に通る駿河台
この街は働かない者を拒否する。
そこでこの私は
そろりそろそろ駿河台下
今日はなぜかこの街に
変にくすんだ色がある。
グレーの歩道にくすんだ茶色
落ち葉に鈍い陽の光を
浴びて歩く親子連れ
そろそろ受験のシーズンか
学生も多い街の風景
眺める自分は茜色
そのまま近くの古本屋
大学下のK一〇書林
哲学を語るにや金がない。
哲学だって金次第さ。
ん。
ん。
ん。
金次第
前 次 グループ"酔"
編 削 Point(11)