囁き(ささやき)/……とある蛙
 
しもた屋の二階の窓から眺める世間は
霧雨にすべてが濡れている。
少し前囁かれた

 ちょっと起きておくれよ

という女の声に 後ろ髪引かれ
そのまま昼まで 居付いたが
この雨で世間に戻るのは
鬱陶しく

裏を返しに来たのだから
も少し懇ろ(ねんごろ)に濡れようかと
馴染になるには少し足りないが、
女に酒を買いに行かせ、
今こうして窓から世間を見ている。

こんな事している間に
遣手婆ぁが来やがったら

 この子の面倒見てくれよ

等 と舌なめずりして押っつけられるかも

それもいいやな

っと いけねぇ長居は無用かぁ

遣手婆ぁが来る頃には
さっさと飛ぶ鳥
帰り支度
否応なしに世間の中さ

もう一杯よそに飲みに行くか。
   グループ"酔"
   Point(9)