音のこと/はるな
はそれをおこなった。耳もとへ凍った花を持っていき、握りつぶした。よく凍ったものほど、かりんといってくだけた。ささやかな冷気と、体温で溶けてゆくばらばらの花びら。
薔薇がいちばんだった。うすい花びらがきちんと一枚ずつ凍るさまは、わたしを歓喜させた。棘ののこる茎を切ってしまって、花のあたまだけを凍らせた薔薇を掌にのせていると、赤ん坊の首を切り取ったようなきもちになった。そして、握れば、きちんと砕ける薔薇のかしこさ。しゃらしゃらとぜいたくな音のする際に、夜は朝へと寝返りをうつ。それを愉しんだ。
うちの庭の薔薇は、そう長くはもたなかったので、しだいにわたしは花屋へいった。商店街にある、ちいさな、む
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