靴のこと/はるな
梅雨の只中だ。来る日も雨。こちらは雨も強い。どこにいても空気が重ったるく水分を含んでいる。
昨日、婚姻届を提出してきた。受理日は今日になると言われた。警備室での提出。警備員のおじさんが二人で、そろっておめでとうと言ってくれた。足に合わない、でも一番に気に入っている靴を履いて。(金色で、太くて高いかかとのついた美しい靴。)国道沿いのすき焼き屋で夕食をとった。
わかったことがある。
わたしはもうずいぶん前から彼のことは愛していたのだ。一緒に住むのよりも、遠いところへくるよりも、婚姻届に記入するよりも、昨日よりも、ずいぶん前から。だからそのどれにも覚悟は必要なかった。それはもう
[次のページ]
前 次 グループ"日々のこと"
編 削 Point(4)