雨のこととチョコレートのこと/はるな
れて区別することができる、ということは、わたしを安心させる。
むかしは―それがどれくらいむかしなのかわたしにはわからない―、今よりもっと多くのものをそうやって区別できた。明るいものと暗いもの、大きなものと小さなもの、恐ろしいものと安心なもの、やわらかいものと硬いもの、わたしのものと、わたしのものではないもの。それが、いつの間にか、「あちら側」と「こちら側」に、ひどく漠然としたものになっていた。
いまでは、「あちら側」と「こちら側」のあいだには、あちら側でも、こちら側でもない空間があり、それがどんどん―どんどん、どんどん―広まっていく。
夫のことが好きなのは、夫がわたしの窓になってくれ
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